横浜と並び、今年2009年が開港150周年の函館。(そして僕の故郷・函館)

市民参加型のまちづくりやイベント企画などが数々計画されている中で、
その裏にもう一つ、今まさに産み出されようとしている一つの輝きがあります。

コミュニティカフェ「goes around cafe

カフェの看板

カフェの看板

僕はこれを、今後10年間の函館の奇跡の始まりと感じます。

goes around cafeは、若者に函館を愛してもらうため、20代半ばの数人が手作りで1から始めるカフェ。
メンバーは特に飲食店の経験もなく、内装から何から、自分たちで試行錯誤しています。

コアメンバーは、BUNBUNとMAEKAWAさんの二人。

BUNBUNは埼玉出身で、元々は営業力で群を抜く1兆円売り上げ企業某Rの営業マン。
函館にゆかりがある人との関係が元で、いままで数回函館に訪れ、完全に惚れ込む。
その一方で、函館の暗い現実も知り、いてもたってもいられなくなり、自分の出来ることは何かを考え始めたという。
そして、退社して移り住んでしまったのだ。笑

BUNBUN

BUNBUN

MAEKAWAさんこと、みきじは元FMいるかのパーソナリティ。FMいるかとは、函館のコミュニティFM。函館市民で知らない人はモグリ。
MAEKAWAさんは函館出身。大学がハワイと別府のAPU。卒業後に函館に戻られた。
人と人とをつなぐプロ。前職のパーソナリティ時代は、街のたくさんの人と会ったり、はなしてきたことになる。

(ちなみに、FMいるかは、日本初のコミュニティFMで、市民メディアの世界でも有名です)

みきじことMAEKAWAさん

みきじことMAEKAWAさん

彼らの目的は、若者に人生や仕事の楽しさと、函館を好きになってもらうきっかけづくりとのこと。そのための場としてカフェを選んだのだという。
大学生をつなぎ、さらに世代間を緩やかにつなぐ場も作る。

カフェの中の黒板

カフェの中の黒板

多くの地方都市と同様に、函館の若者は多くは大学や就職で街を出る。
しかも、いやいや出るのではない。「この街では出来ること、楽しいことなんて何もない」と思っている若者も多い。

外部からみた函館は、夜景やイカをはじめとする海鮮、夏の気候を始め、観光都市として魅力が高い。
有名な文化人も多い。(ミュージシャンだけでも、YUKI, GLAY, 辻仁成, 北島三郎, あがた森魚, 中村耕一 などなど。詳しくは、http://ja.wikipedia.org/wiki/函館市#.E5.87.BA.E8.BA.AB.E6.9C.89.E5.90.8D.E4.BA.BA)

函館山と津軽海峡

函館山と津軽海峡

しかし、現実には毎年3〜4%程度の人口減が続いている。(参考:http://www.seikatsu-guide.com/citysearch/search/01202 )
にもかかわらず、観光都市ゆえの油断もある。この街を蝕む病理は着実に広がっている。

最近のタクシー運転手の月収は12万円。一方、月15万円程度の生活保護をもらって、昼間からパチンコを楽しんでいる人が年々増えているという。
なかには生活保護の受給中にも関わらず、隠れて夜のお仕事をして30万円くらい稼いでいる人もいるとの話を聞いた。
他にも、離婚率が全国806市区中58位など、極めて高い。DVや殺人も多くなっている。

そのような中、若者は、この街のことを「仕方なく過ごす街」と捉えてしまっている。
これはもったいない。どんなLIFEも、仲間と、ちょっとしたきっかけで、ステキなものに変えられるのに。
そういうことを、伝えたいのだろう。

個人的に、とても共感したのが、カフェオーナーMAEKAWAさんの動機。
MAEKAWAさんは前述のとおり、大学の時に函館を一旦離れ、その後戻ってきた。その際に、他の都市に比べ、なんてステキなところなのだろうと、函館の良さを再確認したという。
一方で、多くの仲間が外に出て行ってしまう。また、数少ない地元に残った仲間も、たくさんの問題を街や社会のせいにして、日常に愚痴をこぼしてばかりいる。ものすごく楽しい青春時代を共に過ごした仲間の、そういう姿を見ていると、なんとかしなくては、と思うとのことだ。
また、夢を追いかけ東京に出て行った仲間が、夢を「卒業」し、地元に戻ってきたことがあったという。そのとき、地元の友人の多くは、歓迎をするのではなく、後ろ指を指すような冷やかしに似た態度を取るものもいたという。このことに対して「いったい何なんだ!」という思いがあったとのこと。なので、そんな函館を変えたい、と。

これは直接本人の口から聞いたわけではなく、BUNBUNから伝聞で聞いたので、今度はもっと仲良くなって、本人から直接聞きたい。
いずれにしても、僕自身も出郷者といえば出郷者だし、このMAEKAWAさんの話は、本当に共感しました。

持ち前の営業力と、人当たりの良さをもったBUNBUN。人と人をつなぐプロで、どこかしら不思議なオーラがでているMAEKAWAさん。
二人とも、とても、ポジティブで、明るく、行動力に溢れている。

でも、こんな二人でも、たった二人だけでは、コミュニティカフェは作れない。
そこで、mixiを通して、想いを伝え、サポーターを募ったという。その数なんと150人強!
カフェ予定地で、サポーター会議などを重ね、徐々に準備が進んでいます。

ホームセンターに買い出し中

ホームセンターに買い出し中

料理の天才マッシー、内装の天才サキちゃん(それぞれ、本職が、学校の先生、看護師)、函館ベンチャー企画代表のおおくぼくん、いつかは市長というふじいさん。
他のメンバーも、愉快で魅力的な人ばかりです。

棚、自作中

棚、自作中

料理人マッシー

料理人マッシー

ふじいさん

ふじいさん

そして、準備中のカフェは、もう既に、開店後の自由な雰囲気が。笑
BUNBUNとサキちゃんは、アコースティック片手に、aikoやYUKIなどを歌ったり。店長のMAEKAWAさんは、ブログを書くため256MBしかメモリがないPCと格闘しながら演歌を歌ったり。ふじいさんとマッシーは、オセロゲームで本気対戦。一手を打つのに数分間考える、本気の対戦です。勝ったマッシーは、ふじいさんに首輪を付けてペット執事にして喜んでいました。プチSです。笑

このカフェのテーマは「毎日が学園祭前夜」。言い得て妙です。笑

アコースティックライブ中

アコースティックライブ中

オセロゲーム中

オセロゲーム中

敗者はイヌに。笑

敗者はイヌに。笑

サキちゃんも、MAEKAWAさんも、本当に歌が上手いです。サキちゃんは、ナチュラルなビブラート感があり、これは1/Fゆらぎでも出ているのではないか、というくらいでした。MAEKAWAさんは、こぶしがつごいので演歌ですね。サキちゃんは、ストリートでライブもやるそうです。函館の歌姫 Peachさんが、ご結婚で苫小牧に移られるというプチ悲しいニュースがありましたが(地元ネタ過ぎるか)、このカフェから次なる歌姫が出る日も近いのではないでしょうか。

個人の才能ももちろん、チームとしてもステキなチームでした。
地域を元気にする三大要素として、よそもの。若者。ばかもの。とよく言われますが、この3つがバランス良く発揮されたチームです。
こんなステキな仲間と、カフェを開けるなんて、正直うらやましい。

元気な三人

元気な三人

三年後には三店舗。五年間で若者ネットワークを作り出すのが目標とのことです。
(函館には、実は8つも高等教育機関があるのですが、それがgoes around cafeのオープン場所である戸倉地域の他に、中部の五稜郭近く、北部の赤川地区、南部の元町など、かなり離れて点在しているのです。)

オープン後は、時間帯毎にメニューやサービスを変え、大学生だけでなく、高校生・高専生、子連れの主婦、自分たちと同じ若手社会人などが集まるようにするとか。そして、その世代間をゆるやかに繋ぐイベントなどのしかけもやってゆくそうです。また、NPOカタリバのように、大学生が高校生のキャリア相談に乗ったりとか、社会人が大学生の相談に乗ったりとか、そのようなイベントを開催するとのこと。
僕としては、基本、前述のようにフリーダムな雰囲気を大切にしつつ、ときたまイベントで、ワールドカフェなどのワークショップ手法を用いたダイアログを実施したり、ネットも駆使したつながりとアクションを生み出せる場になると良いなあ、と思います。そのために、サポートできることは最大限したいなぁ、と。goes around cafeに早くも、惚れ込んでいます。笑 函館の外にいる人間ならではのコミットメントを探します。

例えば、最近ようやく海士町の活動などが評価され、「田舎で働き隊」などのプロジェクトがたくさんうまれています。都市では、自分の存在意義ややりたいことが見つからずに思い悩んでいる若者が、田舎にいけば、生き生きとし出すこと、そのことにようやく国も地方自治体も気がついてきました。一方で、同じように都市で悩む若者が、すべて農村や漁村に向いているか、というと、おそらくそうではないでしょう。でも、何もかもが複雑でやりつくされている感のある東京では活かされなくとも、それ以外の地方都市では十分に活きる若者のチカラはあります。函館ほどのサイズ・地位の街で、カフェ運営を通したコミュニティづくり、リーダシップの発揮、等々、これらを求めている若者は沢山いるのではないかな、と思います。海士町のように、Iターンの若者の増大から、Uターンも増える。出郷者が、自分の地元のすばらしさに気がつく、といった効果も期待できるかもしれません。このあたりのデザインをしっかりとして、きちんと現場でラウンチさせることも素晴らしいな、小さいことからやろうかな、と思います。例えば、面白法人KAYACのようなベンチャーを、自分の手で函館に作り、Iターン、Uターンを受け入れるなどなど。

実際にいつのタイミングで、と具体的に考えられているわけではありませんが、ひとつ確実に言えるのは、海士町の活動や、沖縄の今津くんの有限会社ルーツの活動など、僕が自分自身のライフワークとして掲げる、みらいの「大学」づくり、って、もうやっている人はやっているんだなぁ、と、いうこと。自分の四の五の言わずに、そろそろ動き始めないと、と、思いました。大好きな故郷でこんなにステキなチャレンジをしている同世代の仲間がいて、出会えたこと。これは、大きな暗示なのかもしれません。

若者の存在に、函館の未来の可能性をかけた、このステキな挑戦の始まり。
カフェ、オープンは2009年5月2日です!!

この記念すべき瞬間に、僕もずうずうしく立ち会うために、月末から連休半ばにかけて、また帰郷しちゃいます。
これを読んでいるあなたもいかがですか。ちょうど、桜満開の函館も見られますよ!

活たこ刺し

活たこ刺し

函館山からの風景

函館山からの風景

<<関連URL>>
goes around cafeのブログ: http://ameblo.jp/goes-around/

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