5月23日、なつかしの三田東宝ビル(前職のオフィス)で、慶應SFCの井上英之研(いの研)のOB会が開かれました。

近況を発表する卒業生

近況を発表する卒業生

このOB会は、モンキーミーティング2009と題し、卒業後2年目のOB/OGを中心に、最近の近況を報告しあう場として自発的に企画されたもので、現役メンバーも5,6人、OB/OGの友達も数人参加し、合計で20数名の規模で行われました。

この近況報告は、いの研が用いる「マイプロ発表」というツール&プラクティスを元に行わました。

このマイプロ発表というのは、いの研が持っている教育プラクティスの一つで、特別なフォーマットに以下のことを書き込み、それを元にプレゼンテーションを行うものです。

  • 今日までの自分の生い立ち(マイヒストリー)
  • 今やっているプロジェクトの概要(マイプロジェクト)
  • これからやりたいこと

この「マイプロ発表」というツール&プラクティスは、社会起業教育において一番重要なことのいくつかとして、

  • 誰かからの借り物の言葉ではなく、自分自身の言葉で、等身大の問題意識を持つことの大切さ
  • たとえ他人からみたら些細な問題意識であっても、個人の顔で考え、描き、発信し、行動することが、世界を変える第一歩であり、社会起業家精神の原点であること
  • 自分のパーソナリティや、今の自分の原体験の発信を通して、自分の問題意識や行動の背景を他者に理解/共感してもらう能力を持つこと
  • 成功/失敗は関係なく、行動を行い、その学びを仲間とシェアする勇気の大切さ

を実現するものとして、いの研の社会起業家教育の根本を担うツール&プラクティスです。

このツール&プラクティスは、メンバーの卒業後も、OB/OGの手によって、それぞれの地域/職場/コミュニティで実践され、進化していっています。上記の目的を実現する上で、メンバーがお互いのことを信頼し、安心して自分をさらけ出せる「場づくり」の重要さはいうまでもありません。

この「マイプロ発表」というツール&プラクティスは、奥が深いので、また機会があれば、別エントリーとして書きますね。

当日の一幕

当日の一幕

この「マイプロ発表」というツール&プラクティスを使って、以下のようなOBの人が発表を行いました。

  • たすく
  • まりなっちょ
  • むーみん
  • あきな
  • かめ
  • じゃすみん
  • いの
  • はせ
  • もえこ
  • やすかね

今後、機会があれば、これらのステキな仲間達を、ご紹介してゆきたいと思います。


その前に、今回の全体を通した自分メモを公開します。
OB/OGの発表を聞いていて、いくつかの共通点がありました。

その中の一つは、自分PRロビー活動の重要性。

集合写真

集合写真

会社という組織の中で、自分の考えていることや自分の強みなどを理解してもらうために、日頃から周りの社員や上司に、自分への理解を促進させる働きかけを行うことの重要性です。例えば、自分が興味の持ったセミナーの情報を部署のMLに流したり共に参加すること、あるいは、大学時代にやっていた活動に招待する、友人に同僚を紹介する、などなどです。

これら自己PRロビー活動(いの研用語ではプチIPOといっています)をやっている人ほど、自分自身がやりたいこと、自分自身の強みや問題意識に近い仕事をやる機会を早い時期から得ていると思いました。

次に、SRIの文脈から出た議論で、営業こそ世界を変えられるという話。

OGの中に、アナリストの立場から、金融業界の人たちの意識を変え、短期的利益優先の投資・運用を、もっと社会的なリターンを重視するものに変える活動を行っている人がいます。ただし、あまり上手くは行っていないという悩みの告白に対しての井上先生のコメント。

  • 金融業界の社員さんの意識を変えるには、お客さんを変えるのが一番
  • お客さんが、SRI(社会的投資)に興味を示し、そちらの商品を買うようになれば、社員は意識を変えざるを得なくなる
  • そういう意味で、お金を持っているお客さんという存在を変えられる可能性のある「営業」というのは、実は大きな力を持っているポジション

この文脈のまま、多くのNPOが陥っている構造的問題に言及。

多くのNPO、特に事業型NPOでないNPOは、行政の補助金・助成金が収入源の多くを占めます。価値の提供相手がお金を持っていない人たちだとすると、補助金・助成金自体は必要な存在で悪いモノではない。しかし、価値を提供する相手とは別のスポンサー(行政)からお金をもらっていると、どうしてもお客さんに与える価値よりも、スポンサーの意向を重要視せざるを得なくなります。TV局も同じ構造。ここで、事業型NPOやソーシャルベンチャーなど、事業が生み出す価値の提供先から直接的に収益を得られる構造は強いといえるでしょう。

しかしながら、それができないNPOも、お金のもっていないお客の声をスポンサーにつなげる努力をすることは出来る。そして、それが出来ているかどうかによって、それらのNPOの間でのファンドレイズ実績に大きな差があるというデータ・ケースがあるとのことでした。

たしかに、産業社会に比べ一人一人の力が強くなっている今日の情報社会において、スポンサーの社員や家族、あるいは身近な人に、もしかしたら声の無視できないNPOのお客さんがいるかもしれません。少なくとも、NPOのお客さんが、スポンサーの製品の想定顧客になるかもしれません。お金をあまり持っていない人たちですら、これからは無視は出来ません。一部の人をのぞいて、みんながこれからはお金をあまり持っていない人たちになるわけですから。

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