はじめに

この記事エントリーは、7月12日に「ベーシックインカム・実現を探る会」主催で行われた古山 明男(ふるやま あきお)さんの講演会「ベーシックインカムのある社会 – 労働と教育の基本的転換」のレポートの後半になります。前半はこちらでレポートしています

なお、後半(この記事エントリー)は、ログの精度が低い部分があるので、今後数日のうちに、配付資料をもとに補足する予定です。

修正1 (2009/07/15 21:38): 誤「島崎議員」 → 正「峰崎議員」 (野末さん、ありがとうございます!)

講演録(後半): ベーシックインカムの実現可能性

ベーシック・インカムの財源は新公共通貨で

150兆円:政府80兆円
今の国の予算をオーバーする

BIは、普通に考えたらできっこない。

ではどうするか?
所得税45%でいける
消費税ではどうか
GDP約500兆円。政府の税収50兆円
よほど増税しないとむり
北欧。所得の7,8割を社会保障に使う
そうしたら300兆円規模の財源が出来る
よって、北欧型に行くというコンセンサスができれば、我々の経済規模でBIは可能

80年代に合意ができていれば楽に出来た
これだけ追い詰められている今、かなり難しい
税収が激減している
大企業の城下町的な地方都市。法人税の激減

この状況だからこそ、BIの議論が進む。
しかし、そういうときこそ、実現への力が少なくなっているというジレンマ

このジレンマを撮る新電子マネーを提案
ベーシック・インカムの財源は新公共通貨で

とりあえず仮称。e¥ (イーエン)
電子マネー
ICカードで利用

全てこの個人に新通貨の引き出し枠が出来る
引き出し権が貯まる。毎年8万円ずつ。
引き出し権であって通貨ではないから利息は付かない。譲渡できない。担保に出来ない。所得税はかからない。

これは個人が信用創造をする世界の実現を見通した仕組みです。

引き出し権はぜったいに差し押さえされない。破産。DVからも守れる。

使い方
ICカードにチャージ。数万円まで入る。郵便局やコンビニで端末
タッチで決済
大きな買い物はコンピュータ上で
僻地やお年寄りには現金で渡す

e¥の正体
実は国債。少額国債
約10年後には消滅
1回使う度に1円手数料を払う
使わなくても1ヶ月に1回手数料

国が価値を保障
少額国債をそのまま通貨にするしくみ

cf) ちなみに、日銀券も元を正せば国債を担保にしている

e¥でつかえないもの
外国通貨、株、定期預金、土地買えない、借金返済に使えない
したいときは、日銀マネーに交換。10%ほどの手数料

日銀マネーでBIをすると、結局銀行に回り、バブルになる
生活のために使うお金にしたい

ヴェルグルの労働証明書(スタンプ通貨)が元のアイデア
 wiki参照: 

e¥では、手数料を自動徴収
国家がやるので、国家につぶされることもない
あらゆる口座移転で1%
ただし、一ヶ月以内に他人に渡す場合は1%とられない
1年で11,4%減る

なぜ減価されるのか?
お金をためのませないため。
お金持ちとはふたついて、収入が多い人と、お金を貯め込んでいる人

収入が多くても、消費も多ければ経済的には良い
お金を貯め込んで使わず、利子で生活をしている人こそが、経済を停滞させる

税収で担保された国債
納税通貨として認める
受け取った企業・生産者側にも必ず使い道がある
日銀券との交換を保障する(1年分の減価額に相当する手数料あり)

銀行の決済用口座
e¥用の当座貯金
銀行の資産とはしない。e¥の減価を銀行は負担しない
手数料は取る

(レジュメ通り)

銀行貸し出しの大変化 ← これが一番大きい!!
元の100万円から、1000万円の貸し出しができる今日の仕組みが成り立たなくなる!
バブルの根本、資本主義の脆弱性が回避できる

e¥は当座預金ではなく、普通預金として受けいれるメリットがない。銀行にとって。
銀行での信用創造がe¥では起きなくなる

それでも貸し借りは生じる

e¥を借りる側
ずっともっていると損をするお金
次々に使ってしまうが、生産活動に参加していれば、次々にまたe¥が入ってくる

e¥を貸す側
減価を免れる分、無利子、マイナス金利でも特をする

e¥管理銀行による無利子融資
¥e管理銀行は、一般銀行に対して、e¥を無利子融資する
減価するマネーだから、国が無利子融資をしても、インフレにならない
回収された古いe¥を融資に使う。融資に新規発行はしない(インフレ防止のため)

e¥だけの給料は困る
日銀券も必要。賃金の中身は?

A案: 

B案: 

C案: 

国にe¥が集まる。みんな税金を払うから。
税金の前払いが起きる。
国に納税されたe¥は減価がストップする
できだけe¥のまま流通させる。無理なら、日銀限に交換
積み立てて運用するタイプの基礎年金等は困難になる。長期的には徴収タイプに移行

e¥による恐々経済財源確保

法人税は実は我々消費者負担
結局元は売り上げ
儲かっていない企業はあまり法人税を負担していない
トヨタを買ったとき、かなりの法人税を消費者が負担している
この見えない負担が見えるようになるので、一見増税されたように見える
しかし、結局はいくらはらったか。(項目が変わるだけ)

税金。みんなで社会を支えるためのコスト、が元々。

公共経済財源確保のシミュレーション

法人所得税14%, e¥所得税0%
消費税25%
地方と国の分配率 7:3 or 6:4
地方自治の拡大
教育費の全面無償 公立・私立 高等教育まで
福祉の充実

シミュレーション1
BI発行額 年間116兆円
 毎月8万円、15歳以下半額
93兆円の消費増
限界消費性向 0.8として
民間最終消費支出240→330兆円程度(帰属家賃除く)
約30兆円の輸入増
GDP 550兆円 14%の成長
日銀券に交換され、貯蓄、輸入に向かう 30兆円程度
 (ほんとうに準備しなければならない¥金賃 支出になるのは交換差額11.4% 3.4兆円)← 3.4兆円で14%のGDP増加

シミュレーション2 
個人所得税0%, 消費税25%の場合
消費税収 83兆円
 ↓
38兆円税収が多くなる ← 個人の所得が増え、GDPも上がった上での新たな財源
 8兆円 教育費全面無償、教育費増
10兆円 年金
 5兆円 福祉充実
 5兆円 医療費

問題は輸入増
今の我々はインフレは起きない。買いたい物が増えれば、海外に出て行く。輸入が増える。こっちが本当の問題。
ある程度は輸入超過でいい。
外貨で持っているのはムダ。商品券をもらってよろこんでいるだけ。しかも値下がりリスクがある。ちゃっとお買い物した方が良い。
ただし、国内産業が空洞化した結果の輸入超過はまずい。
国内産業が空洞化していなければ、国内生産が増える。空洞化していたら輸入が増える。
今はまだ間に合うと思う
外国はe¥なんて受け取らない。よって日本円に変える。そのときの11.4%が実質的な関税として機能する

財政問題
日銀マネーはバブルを起こしやすい
e¥はインフレを起こしやすい
日銀公定歩合と合わせ、ゆるやかなインフレで政府累積債務を低減する

コントロールのしやすさ
e¥はコントロールしやすい。4つのパラメータ
発行額
日銀券との交換率
減価率
使用料
たとえば、減価率を小さくすれば、日銀マネーに近くなる

地方通貨も可能
e¥と同じ仕組みで、地方税、地方債を組み合わせて、地方通貨を作ることも出来る

Q&A

くりばやしさん>
1) BIに基本的に賛成。ただ、生産の在り方もかんがえないとまずいと思う。利潤を第一にした今までに資本主義自身を変えていくことも考えないと、分配面だけでは限界があるのでは?
資本主義を支える労働の商品化をBIは切り崩すので、抵抗も多いが、それだけ可能性があるとも考えられる。

古山さん>
利潤からバブルマネーになり、生活に回らない。不況が起こる
生活の方にながれるにはどうしたらいいか
資本主義をやめて社会主義型でいいものができるとは思えない
生産の効率性は維持し、問題である分配をBIで解決する
生産について。どういうモデルがあるか、まだわからない。
抵抗は大きいと思う。
でも、実現可能性はあると思っている
新しいシステムを作らないとどうしょうもない、というときが数年で来ると思っているから

2) 100円ショップ。途上国の安い労働力が背景。日本のことだけ考えていて良いのか?

外国輸入もたくさんあると思う。この点は私の不十分。

3) シミュレーション。消費税が25%。消費税は所得が少ない人には大きなインパクト。消費税で良いのか?

消費税単独増税は反対。あくまでBIとのセットによる導入。
そうでなければ、所得の低い人がたくさん払うことになる消費税は反対
BIと組み合わせれば、所得の低い人の中には、かえってプラスになる人も増えてくる

ひろたさん>
Q: e¥のことで質問。なぜ、政府通貨をつかわないのか?なぜ借金の国債なんだ

A:
減価させる政府通貨だとしたら、私の提案するものとあまり変わらない。
減価させないとしたら、インフレを生むからだめだ

なぜ国債にしたかは、今日すでに信用されているから
額としても、桁違いの国債というわけでもない。今の発行残高と比較しても
かなり手堅いタイプ設計をしている

発行益について
ロシア民話「戦争から逃げてきた兵隊さん。みんなで美味しいスープを作る。
あとはじゃがいもがあるといい。にくがあるといい。
良いスープができた」という話
国債は出したときにお金をもらう
e¥は、出したときは何もない。返すときにお金。最初は信用だけで成り立っている。

今の国債。税収の13年分の額発行している。それでもみんな信用して買っている。
e¥は、毎月これだけの収入があるという裏付けがある。

ふかさわさん>
Q:議論の枠組みとして素晴らしい提案。憲法25条のレベルの保障では8万円では不十分
十分にするにはどうしたらいいか、ぜひ提案してほしい。

白崎さん>
A: 今のご質問、前回の関さんからのご回答が、近日、 bijp.net にアップされます
例えば、障害のある方。300万円の機材をBIで買うことは無理。

Q:シミュレーション。14%近いGDP成長。地球規模の持続可能性を考えるとあまりにも大きいGDPはどうか?

約100兆円入れてると14%伸びる。ただ、200兆円いれると20%越えるか、というと、そういう話ではない
今の需給ギャップをうまく満たせるから、この数字になっている
日本でBIを導入したら、日本はどんどん中国から輸入するだろう。そのケースでのシミュレーション

Q:言葉としてのベーシックインカム。一般に提案するときに、カタカナでいいのか?日本語化の議論を。

名称の議論。いいものがあればそれがいい。皆さん悩んでおられる。
国会でもベーシックインカム。ずるずると使われている。
小澤さんからも一言

小澤さん>
私が、ベーシックインカムというままで日本で持ってくることを決めた
日本語として相応しい日本語を提案できないと、制度は実現できないだろう
日本語化してしまった瞬間に、誤解の不安を
違った意味合いで受け取ってしまい、それで賛成だ反対だ、になるのは早すぎると思った
勝手に適当な名前をつけられなかった
もっと議論をして、みんなの智恵を集めて考えることが大切
それまでは違和感があっても、カタカナで使うべきだと私は思った

荒井さん>
Q1) e¥と法定通貨。企業の側。事務作業が増えるのではないか?

古山さん>
これは避けがたい問題。会計を楽にする方法を考えないと。
コスト以上のメリットを提示してゆくしかない

荒井さん>
Q2) 消費が多くなると、環境破壊などにならないか?

古山さん>
公共経済といっていたのがここ

もうモノはいいのではないですか?
時間にふりわてることもできる
福祉。本当の豊かさ

高橋さん>
Q1) 犯罪とBI

数字データに足りいるまで調査はしていない
お金に関する犯罪は減るだろう
理由無き犯罪。この手の犯罪は、自尊心の低さが原因
自尊心をおとしめているのは、「お前なんかこの世の中生きている価値あるんか?」という社会圧力
特に、稼いでいる人が稼いでない人へ向けられることが多い

Q2) 反対勢力は何か?

私自身もこんなの実現できるのか?と思っていた。
出来るということを証明するために、ここまで複雑な説明が必要
感覚的にもアレルギーある

抵抗勢力はいくらでもある
働いて頑張っている人たち。「働くことがムダになるのか。。。」
金融業界。大変化
サラ金。価値が無くなる

一番の味方は、ここ数年で起きるであろう一大危機
失業率が10%越えると全然変わってくる。実感不況。
ローン破産。家無くした人。会社がどんどんつぶれる。
いままでの政府の手はすべて尽くされている。手段が無くなる。
そのときにBI

たかださん>
Q1: これだけ前途多難なら、北欧型の社会に行く方がやりやすいのでは。前例もあるし

古山さん>
1980年代に日本は北欧型にシフトするべきだった
今の社会問題を抱え込まなくて済んだ
今からでも遅くはないと思う
北欧型は地方自治と税収増のセット
所得の7割を社会保障に回すという国民的コンセンサスをとるのも同様に難しい
それより、危機に対して一気にBIのほうが可能性あると思う

たかださん>
Q2: 実現するための政治的なパワー

野末さん>
メールマガジンをやっている。国会でのBIの発言するをカウントしている。
2004年〜2008年までBIが消えた
2008年、民主党峰崎議員、鈴木寛議員、BIについて発言
今まで国会で10回
ご自分でも検索できる

白崎さん>
各政党アンケートでBIについて調査
新党日本が一番充実。次は、民主党が充実
共産党はベーシックインカムは意外に冷ややか

たかしろさん>
Q: 労働教育の話に一番共感

私は、労働教育の話が一番にいたかったこと
会社員として生きる教育
人間として生きる教育がないがしろにされている
教育から変わるのが、人間の在り方から変わるのが一番健全

ただし、今、そこに迫る経済危機
それの乗じてBI。結果として、労働価値観が変わる。教育が変わる。
教育が変われば、世界が変わる
お互いを高め合う世界
そここそが、本当にしたいこと

Q: 本当によいことには、悪智恵を働かせる人が居る

e¥について、suicaの仕組みでそれほど悪いことは起きていない

山口さん>
Q: ベーシックインカムは、所得ではなく給付ではないか
所得というと、給与と感じてしまい、税課税の対象になると勘違いされるのではないか?

白崎さん>
これは改めて議論したい
ベーシックインカムは福祉ではないことが確認したい
給付。お上が施すモノ、というニュアンスがある
でも、あくまで個人的な意見

古山さん>
給付と感じやすいのは、条件がついている、というニュアンス。60歳以上とか。
給付と感じないのは、こっちが請求したら、かならずもらえる。権利。
ベーシックインカムは所得税フリーにしないといけない
究極的には個人の信用創造にもっていきたい

今は生産のためには信用創造が認められている。でもこれでは無駄な生産も起きる
生存のために個人が信用創造できる社会

??さん>
Q: それでも給付のほうがいいのでは。名称

鈴木さん>
Q1: なぜ、BIは、マスメディアは扱わないのか?
なぜ、ワークフェアのようなモデルは強く扱うのに対して、BIのようなものは扱わないのか?

古山さん>
基本的には偶然。人数が少ないから。
エンデの遺言。ああいうのも生まれた。当たるか分からないけど、取り上げた当時。
あるパーセンテージを超えたら、いっきに取り上げると思う。今急速に増えつつある。臨界点を越えるだろう

Q2: 危機が迫ったらBIというが、政治的コンセンサスの取り方をしっかりと考えていった方がよい
労働組合もBIに反対が多い

インターネットの力が10年前と全然違う。政策を作っている人たちがインターネットを活用し始めた
みなさんもブログを書ける。反対でも良い。書いてほしい

長野県中川村村長 曽我 逸郎さんのスピーチ)

小澤さんのスピーチ

第一部は、BI研究者の中でもコンセンサス
第二部は、様々な代替案がある。これもよいアイデアだと思う。
コンセンサスが取れているBIの部分の議論だけでなく、このように第二部のような話がたくさんでてきるのが、実現にとっては重要

BIは、資本主義とも、社会主義とも、環境との親和性がある
故に、どの方向に向かうかのせめぎ合いがあるのは当然

(小澤さんのスピーチ、つづき)

次回、小澤さんがゲストスピーカー

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