本講演会は、先のエントリーでご紹介した書籍『102年目の母の日―亡き母へのメッセージ』の出版記念講演会で行われたものです。

ご講演中の橋爪謙一郎さん

ご講演中の橋爪謙一郎さん

「みんなちがって、みんないい」。「あるがままでいい」。

何事も個人のせいにしてしまいがちで、どんな感情を持つかさえ、周囲の雰囲気によって強制されかねない日本において、一人一人がお互いに「ありのまま」に素直になれる社会の在り方についての、心温まるお話でした。

身近に、大切な人を失って困っている人や、人生に悩んでいる人がいたら、どんな声をかけてあげればいいのか?
それに迷っていたら、以下の講演ログをご覧下さい。

橋爪謙一郎さんは、コミック『死化粧師』(『FEEL COMICS』)の主人公、間宮心十郎のモデルでもある。まさに、おくりびととしてのスペシャリスト。


橋爪謙一郎さんご講演 at 『102年目の母の日―亡き母へのメッセージ』の出版記念講演会


日本は、自分に素直であること、をしにくい社会
素直に自分の感情を表現することをしにくい社会
みんなと同じ。みんなに気を遣う。
それはそれで大切だが、素直が許される社会の方が生きやすいだろう

大切な家族を亡くされた人、たくさんの感情が生じるのに、
泣いてはいけない、この感情は他人に言ってはいけない、と思ってしまう

誰かが素直になることで、それを聞いた人も素直になる
素直になれば、お互いが助け合える
その助け合いの連鎖が増えていくのが、素直な社会
日本では、それがおきにくいと思う。

(中略)

日本は、何年忌とかがある。ある意味では、あつまらなくてはならない。義務感を生む。

一方で、アメリカは、Aniversaryは創らないとできない。
つまり、「あつまれるキッカケ」という前向きな発想。

(中略)

原稿を書いているとき。それは辛い部分もあるけれども。同時に、自分を振り返る充実した時間だったとおもう。
経済が進んだ社会は、忙しく、自分のことを振り返ることが出来ない。
いろいろな感情から目をそらして生きようと思うようになる。
そして、いずれ、そのことすら忘れてしまう。

(中略)

人間の脳は「避けたい」と考えると、かえってそのことにずっととらわれることになる。
自転車の運転で「右に行かないように」と考えすぎると、かえって右に行ってしまうのと同じ。

避けるのではなく、正面から向き合えるといい。
そして、向き合っているときに、その人のそばにいてあげられたらいい。

(中略)

アドラーがかかげる「人間の幸せのための条件」

1) 自己肯定感
自分を責めている人に対して、いくら他人に「そんなことはない」といわれてもだめ。
自分自身が向き合わないとだめ。向き合う姿を共に歩んであげること。
2) 仲間
同じような気持ちを共有できる仲間がいるということ
3) 誰かの役に立てること

世の中の沢山の場所は、危険だらけ。
素直に他人に弱みを見せたら、大変。そう思いこまされている。
安心と安全の場所がなければ、実際に危険。

安心と安全の場所をつくったから、できたとおもう。この本は。
この年で、そういうことができた、彼女(尾角さん)達はすごい。

講演を拝聴する尾角さん

講演を拝聴する尾角さん

(中略)

良く聞かれること「大切な人を亡くされた人に、何をいうべきか。」
それへの答え。余計なことを言わないでください。と言う。

上っ面で言うことは、相手にも無意識で伝わる。

人間はなぜ耳が二つか、目がふたつか。口がひとつなのに。
それは、喋るより、2倍聞きなさい。2倍見なさい。

聞き続けることは、聞く方も辛い。
適当に言葉をかけることは、自分に都合のよいようにもっていっているだけ。

(中略)

自分自身を癒すこと。どんな小さな事でも良いから、たくさんもっているのがいい。
大好きな音楽を聴く。朝に自分の好きな珈琲を入れる。河原で叫ぶ。
なにでもいい。
大げさなことをやらないと、悲しみが癒えないと、みんな思っている。そして、結局何も出来ずに辛くなる。
尾角さん達にもいいたい。
「他人のことばかりではなく、時に自分たちのことも癒してあげてください」

橋爪謙一郎さん

橋爪謙一郎さん

「千の風になってのCDを送られるより、ケータイで5分でも私の話を聞いて欲しかった」という声。
わすれなくてもいい。泣いても良い。介護から解放されてほっとした、そういう素直な感情でも良い。
感情によい悪いはない。その人らしさがあるだけ。


対談


この後、Live on代表の尾光さんと橋爪さんとの対談では、

・自分の不幸な出来事を、なぐさめるのでもなく、さけるのでもなく、「そのまま受け止めてくれた」ことが一番うれしかった

といった尾光さんのお話や、

「ありのままの自分を受け入れてくれる人。でも、自分が本当にできることをやらないと、しかってくれる人間。
そういう人の存在がいないと、自己肯定感が下がっていく」ちった橋爪さんのお話がありました。

尾光さんから橋爪さんへの質問
「自己肯定感の無い人の悩みに対して、何を言いますか?」

橋爪さんの答え。
「徹底的に話を聞く。
「ああ、それは確かに自分のことを嫌いになるねー」といった感じで頷く。
そうすると、だんだん相手が反論してくる。「橋爪さんが思うほど、自分はだめではないですよー」と。
自分はそんなにひどくないと。自分の良さに気がつく瞬間がある。」

なるほどな。と思いました。

尾光さんは、本日のご講演を、自身の出身高校である都立国際高校でよく言われていたこと「みんなちがって、みんないい」とリンクしたと言っていました。

対談の様子

対談の様子


感想


アドラーがかかげる「人間の幸せのための条件」である、1) 自己肯定感、2) 仲間、3) 誰かの役に立てること、は、僕自身が学習環境づくりや、まちづくりの中で経験的に感じる「成功のための必至な条件」そのものでした。僕が目指す共感動経済社会は、「誰もが必要とされていると自覚でき、財力や現在の能力に関わらず個々人の価値観や意志の実現を、みんながいきいきと目指せる社会」です。

また、自殺を減らすために頑張っている人(ex: 自殺ZEROキャンペーン)、大学の中退者を減らすために頑張っている人(ex: NPOカタリバ in 嘉悦大学)などが口にする大切なこと、とも一致するものでした。社会問題の先進国である日本にて、存在する問題の根本原因は、このさん条件の欠如なのかもしれません。

「自分がだめだ」と思う中高生の割合。日本は約6割です。
5年後には半分以下にしたいですね。

二人に一人が買っていきました!

二人に一人が買っていきました!

最後に、橋爪さんの著作をご紹介。

One Response to 橋爪謙一郎さん講演 自己肯定感、仲間、誰かの役に立っていること

  1. […] た別のエントリーで詳しくご紹介します。 […]